日本語の動詞「なくなる」が地域によって「のうなる」「のおなる」「のーなる」と発音される現象は、現代では主に富山県・岐阜県・愛知県以西で見られます。しかし、時代劇などで平安・鎌倉期から幕末を舞台にした作品を見ると、東国武士が同様の発音をしている描写があります。本稿では、この言語表現の歴史的背景と地域差について考察します。
近世以前の日本語の発音体系
平安時代や鎌倉時代の日本語は、現代方言とは異なる音韻体系を持っていました。当時の記録や『古今和歌集』などの文献からは、母音や子音の変化が地域ごとに存在したことがわかっています。
特に東日本(東国)では、平安・鎌倉期の公家語と武士階層の口語が混在しており、動詞の活用や発音には一定の幅がありました。
「なくなる」の東国での発音
「なくなる」の西日本的発音である「のうなる」「のおなる」「のーなる」は、中部以西に現代では多く見られますが、時代劇で東国武士が使用している描写は創作上の便宜もあります。
史料から推測するに、東国でも古くは母音の長短や二重母音の変化があり、現代の西日本的発音に近い形が一部の語に見られた可能性はありますが、全域で統一的に用いられていたわけではありません。
時代劇の言語表現の特性
時代劇では、東国武士も西日本的発音を話す描写が多く見られますが、これは観客の理解を優先した演出です。現代視聴者にとって西日本的発音の方が聞き取りやすく、東国方言を忠実に再現すると理解が困難になるためです。
したがって、時代劇での「のうなる」「のおなる」表現は、史実の言語表現を完全に反映しているわけではありません。
まとめ
近世以前の東国でも動詞「なくなる」の発音には変化があったものの、現代の西日本的な「のうなる・のおなる・のーなる」が広く使われていた証拠は乏しいです。時代劇で東国武士がこの発音をするのは、視聴者へのわかりやすさを優先した創作的表現と考えるのが妥当です。史料に基づくと、東日本の古語は地域差があり、現在の方言分布とは必ずしも一致していません。


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