シンドバッドやアリババなど、昔のアラビアンナイト系の絵本を思い出すと、多くの登場人物が大きなターバンを巻いていた記憶がある人は多いのではないでしょうか。
一方で、現代の中東ニュースや写真では、白黒や赤白の布を頭にかぶった「ケフィア(クーフィーヤ)」姿をよく見かけます。
では、なぜ昔の日本の絵本では“ターバン姿のアラビア人”ばかり描かれていたのでしょうか。
そこには、ヨーロッパを経由して日本に入ってきた「オリエント(東方)」のイメージが大きく関係しています。
そもそもターバンとケフィアは別のもの
まず前提として、「ターバン」と「ケフィア」は似ているようで異なる頭部装飾です。
| 名称 | 特徴 | 主な地域 |
|---|---|---|
| ターバン | 長い布を頭に巻き付ける | インド・中央アジア・中東など広範囲 |
| ケフィア(クーフィーヤ) | 布を頭にかぶり輪で固定する | アラブ地域 |
つまり、アラブ世界にもターバン文化は存在しましたが、現代でよくイメージされる湾岸諸国の服装とは少し異なります。
「アラビア人=ターバン」というイメージは、実際の服装というより“物語世界の記号”として広まった面があります。
『千夜一夜物語』はヨーロッパ経由で世界に広まった
シンドバッドやアリババの物語は、『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』として有名です。
しかし、これらは日本へ直接アラブ圏から入ったというより、18〜19世紀にヨーロッパで翻訳・再編集された形で広まりました。
特にフランス語訳の影響は大きく、ヨーロッパ人の「神秘的な東洋」への憧れが強く反映されています。
この時代の西洋では、
- 巨大なターバン
- 曲刀
- ラクダ
- 豪華な宮殿
などが“オリエントらしさ”を示す記号として定着していました。
そのイメージが日本の挿絵やアニメにも受け継がれていったのです。
なぜケフィアではなくターバンだったのか
理由の一つは、ターバンの方が視覚的にわかりやすく、異国感を演出しやすかったためです。
特に昔の児童向け絵本では、読者に「これは遠い砂漠の国の人物ですよ」と一目で伝える必要がありました。
そのため、現実の服装よりも“記号としてのわかりやすさ”が優先されます。
例えば、日本の昔話でも、外国人がシルクハット姿で描かれることがありましたが、実際の欧米人全員がシルクハットをかぶっていたわけではありません。
同じように、ターバンも「異国風」を示す便利なデザインとして使われていたのです。
実際の中東文化はもっと多様
現実の中東・アラブ世界では、地域や時代によって服装はかなり異なります。
例えば、
- 湾岸諸国では白いカンドゥーラとケフィア
- 北アフリカではターバン文化が強い地域もある
- トルコやペルシャではまた別の帽子文化
というように、一括りにはできません。
しかし昔の絵本では、そうした細かな地域差よりも、「アラビアンな雰囲気」を優先して描かれていました。
日本独自の“アラビアンイメージ”も形成された
日本では昭和時代のアニメや絵本、映画の影響で、独自のアラビアンイメージも作られていきました。
例えば、
- 紫色の衣装
- 金色の装飾
- 巨大なターバン
- 魔法のランプ
などは、史実というより“ファンタジー世界の演出”として定着しています。
特に子ども向け作品では、現実の民族衣装の正確さより、「すぐアラビアだとわかること」が重視されました。
つまり、昔の絵本のターバン姿は「現実のアラブ人」というより、「西洋と日本が作り上げたアラビアンファンタジー像」に近いと言えます。
現代では表現も少し変化している
近年は、文化理解や多様性への意識が高まり、中東文化をより正確に描こうとする作品も増えています。
そのため、現代の映画やイラストでは、地域ごとの服装の違いが以前より丁寧に表現されるようになりました。
一方で、昔ながらの「ターバン姿のアラビアンキャラ」は、今でもファンタジー表現として親しまれています。
つまり、完全な間違いというより、“時代ごとの異国イメージ”として見ると理解しやすいでしょう。
まとめ
昔の日本のアラビアン絵本でターバン姿が多かった背景には、ヨーロッパ経由で入ってきた「オリエント幻想」の影響が大きくありました。
ターバンは実在する文化でもありますが、絵本では「異国らしさ」を象徴する記号として強調されていた面があります。
そのため、現代の中東でよく見られるケフィア姿とは、やや異なるイメージが定着しました。
シンドバッドやアリババの世界は、実際の中東文化だけでなく、西洋と日本が作り上げた“アラビアンファンタジー”の歴史も反映しているのです。


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