ブルゴーニュワインを象徴する名言として知られる「ヴォーヌ・ロマネに平凡なワインなどありはしない」という言葉。この一節は、ワイン愛好家や専門家の間でしばしば引用されますが、実際に誰が語った言葉なのかを正確に知る機会は多くありません。本記事では、この言葉が生まれた歴史的背景と発言者について、史料に基づいて解説します。
名言が生まれた時代背景
この言葉が語られた18世紀後半は、フランス革命前夜にあたる時代で、農業・経済・文化に対する関心が高まっていました。特にワインは、単なる嗜好品ではなく、土地の価値や農業技術、経済力を映し出す存在として注目されていました。
ブルゴーニュ地方、とりわけヴォーヌ・ロマネ村は、当時から特別なテロワールを持つ土地として認識されており、その品質の高さは知識人たちの関心の対象でもありました。
発言者は18世紀の歴史家・思想家アーサー・ヤング
この言葉を残した人物として知られているのが、18世紀イギリスの農業史家・経済思想家であるアーサー・ヤング(Arthur Young, 1741-1820)です。彼は歴史家であると同時に、農業改革家・紀行作家としても大きな影響を与えた人物でした。
アーサー・ヤングは1787年から1789年にかけてフランス各地を視察し、その記録を『Travels in France』としてまとめています。その中でブルゴーニュ地方を訪れ、ヴォーヌ・ロマネの畑を高く評価しました。
「平凡なワインなどありはしない」という評価の意味
アーサー・ヤングが記した原文では、ヴォーヌ・ロマネの畑について「ここでは最良のワインしか生まれない」といった趣旨の表現が用いられています。日本語で広く知られる「平凡なワインなどありはしない」という言い回しは、後世に意訳・要約された表現です。
これは、当時からヴォーヌ・ロマネが他の産地とは一線を画し、区画ごとの差こそあれど、一定以上の品質が保証された土地であると認識されていたことを示しています。
現代に続く評価と具体例
現在でもヴォーヌ・ロマネ村には、ロマネ・コンティ、ラ・ターシュ、リシュブールなど、世界最高峰とされる特級畑が集中しています。これらの畑が生み出すワインは、数百万円で取引されることも珍しくありません。
一方で、村名ワインや一部の畑名ワインであっても高水準を維持しており、「平凡」という言葉が当てはまらないという評価は、18世紀から現代まで一貫して受け継がれていると言えるでしょう。
史料としての信頼性
アーサー・ヤングの記録は、フランス革命研究や18世紀農業史の一次史料として現在も高く評価されています。彼の観察は感想にとどまらず、土地条件、価格、収穫量など具体的なデータを含んでいる点が特徴です。
そのため、ヴォーヌ・ロマネに関する評価についても、ワイン愛好家の伝聞ではなく、当時の知識人による実地調査に基づいた記録として、信頼性の高いものと考えられています。
まとめ
「ヴォーヌ・ロマネに平凡なワインなどありはしない」と評した18世紀の有名な歴史家とは、イギリスの歴史家・農政思想家であるアーサー・ヤングでした。彼の記録は、ヴォーヌ・ロマネの卓越した価値を18世紀の時点ですでに見抜いていた証拠であり、その評価は現代のワイン世界においても揺るぎないものとなっています。


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