三国志の「志」が「史」でない理由とは？その由来と背景を解説

三国志という言葉が使われる際、なぜ「志」と書かれ、「史」ではないのかという疑問を抱く方も多いでしょう。これは単に言葉の選び方に過ぎないのではなく、歴史的な背景と深い意味が隠されています。この記事では、「三国志」における「志」と「史」の違い、その選ばれた理由について解説します。

1. 「志」と「史」の違いとは？

「志」と「史」は、どちらも「物語」や「記録」を意味する言葉として使われることがありますが、微妙に異なります。「史」は、歴史的事実や出来事を客観的に記録することに重点を置いた言葉であり、「志」は、人物の意志や精神的な面に焦点を当てた意味合いを持っています。

「志」を使うことによって、単なる事実の羅列ではなく、登場人物たちの志や情熱、戦いに対する精神的な側面を強調しているのです。

「三国志」という言葉は、三国時代の出来事を描いた物語に由来します。この物語は、ただの歴史の記録ではなく、人物間の複雑な感情や意志のやり取りを重視して描かれています。特に、英雄たちがどのような志を持ち、それを達成しようとしたかという点に焦点を当てており、そのため「志」という言葉が選ばれたのです。

また、三国志を記録した『三国志演義』の著者である羅貫中も、歴史的事実をただ語るのではなく、物語性を持たせることで、読者に感動や教訓を与えることを目的としていました。

「三国志演義」とは、実際の「三国志」(陳寿による『三国志』)を基にした文学作品であり、歴史的事実に基づきながらも、登場人物の個性やドラマチックな要素が強調されています。そのため、「三国志演義」における「志」は、個々の英雄の意志や夢、誓いといった精神的側面を象徴する言葉としてふさわしいのです。

一方、「三国志」は事実に基づいた歴史書であり、政治的な出来事や戦争の詳細に焦点を当てています。ここでは「史」の方が適しているといえますが、物語性が強調される「演義」の場合には「志」が使われました。

「志」という言葉が使われることによって、物語はただの歴史の記録にとどまらず、登場人物たちの内面的な成長や信念、理想に焦点を当てることができます。信念を持ち、どのような困難にも立ち向かう英雄たちの姿勢を描くことで、読者に感動を与え、共感を呼び起こすことができるのです。

例えば、曹操、劉備、孫権といった三国の英雄たちがそれぞれに抱いた志が物語の中で大きな意味を持ち、その精神的な側面が「三国志」の魅力を深めています。

「三国志」の「志」が「史」でない理由は、単なる書き方の違いではなく、物語の精神性と登場人物たちの意志に焦点を当てるためです。「志」という言葉を使うことで、歴史的な出来事だけでなく、その背後にある人々の情熱や理想、信念を強調することができます。

「三国志」が単なる歴史の記録を超え、今も多くの人々に愛され続ける理由の一つは、このような深い意味が込められているからです。これからも「三国志」を楽しむ際には、登場人物たちの「志」に思いを馳せながら、その物語の深さを味わってみてください。