江戸時代の脚気と欧州のパン食文化｜食事の違いがもたらす影響とは？

江戸時代、日本では白米中心の食事が原因となり、脚気（かっけ）が流行しました。一方、欧州ではパンを主食とする食文化が広まっていましたが、同じような栄養不足や脚気の問題は発生していたのでしょうか？この記事では、江戸時代の日本と欧州の食文化を比較し、脚気の発生に関する背景を探ります。

① 江戸時代の日本における脚気の発生原因

江戸時代の日本では、白米が主食として広く食べられていました。しかし、白米は精米されており、外皮部分が取り除かれてしまうため、ビタミンB1（チアミン）などの栄養素が不足しやすい食物でした。この栄養不足が原因で、脚気が流行しました。

脚気は、ビタミンB1の不足によって神経系や筋肉に異常をきたし、歩行困難や筋力低下を引き起こす病気です。江戸時代の日本では、特に都市部で白米を中心に食べることが一般的で、農村部で食べられる多様な食物と比べて栄養が偏っていたため、脚気が蔓延しました。

一方、欧州ではパンが主食として長らく食べられてきました。パンは小麦粉を主原料としており、白米と異なり、外皮部分が含まれているため、ビタミンB1や食物繊維などの栄養素が豊富に含まれています。

しかし、欧州でもパンが主食であることによる栄養不足が問題となることがありました。特に中世から近代初期にかけて、小麦の品質や栽培方法が不安定であったため、栄養価の低いパンが大量に消費される時期があり、ビタミンB1の欠乏が原因となる症例も見られました。

欧州では、日本の江戸時代と同様にパン食が主流だったものの、脚気の発生は比較的少なかったと言われています。これは、欧州ではパンに含まれるビタミンB1が不足しないように工夫されていたためです。特に19世紀には、食物の栄養価を向上させるための工夫が進みました。

例えば、フランスやイギリスでは、パンに全粒粉を使用することで、ビタミンB1を豊富に含む栄養価の高いパンが作られました。また、農民などが食べていた大麦やライ麦を使ったパンも、白米と比較して栄養価が高かったため、栄養不足が防がれていたと考えられます。

日本と欧州の食文化の違いは、健康にも大きな影響を与えました。日本では、白米中心の食事が主流であったため、ビタミンB1が不足しがちであり、脚気が流行しました。これに対して、欧州ではパンを主食としつつも、全粒粉やその他の穀物を使うことで栄養価を補い、脚気の発生を抑えていました。

また、江戸時代の日本は栄養の偏りが問題となっていましたが、欧州ではパンだけでなく、野菜や肉、乳製品など、比較的バランスの取れた食事が摂取されていました。これが、栄養不足による病気の発生を防ぐ要因となったのです。

江戸時代の日本と欧州の食文化を比較すると、栄養のバランスが健康に与える影響の大きさが分かります。日本では白米中心の食事が原因となり、脚気が広まりましたが、欧州ではパンを主食としても栄養価の高い材料を使う工夫がなされ、脚気の発生を防ぐことができました。

食文化は単に食べ物の種類にとどまらず、その栄養価や調理方法、食材の選択にも大きな影響を与えます。栄養の偏りを防ぐためには、食事のバランスを考慮し、必要な栄養素をしっかり摂取することが重要です。