三国時代の中国における武将の総称について

中国史

2024.11.02

戦国時代の日本では「関東勢」や「西国勢」など、地域ごとに武士を総称する表現がありましたが、同様に中国の三国時代にもこのような総称があったか気になる方も多いでしょう。ここでは、三国時代における武将たちの呼称や分類について解説します。

1. 三国時代の背景と勢力図

三国時代は魏・呉・蜀の三国が争った時代で、それぞれが独自の地域を統治していました。魏は華北、呉は江南、蜀は四川を中心とした地域を治め、勢力はそれぞれ地理的な特色と結びついていました。

各勢力の軍は、地域ごとに独自の特徴を持っていたため、日本のように地理的な総称で呼ばれることがしばしばありました。

三国時代には「魏の将」「呉の将」「蜀の将」といった具合に、所属する国名を冠して武将たちが呼ばれることが一般的でした。たとえば、関羽や張飛は「蜀の将」として知られ、曹操配下の夏侯惇や張遼は「魏の将」として称されました。

これにより、地理的な総称ではなく、所属する国の名前を冠する形式が多く見られました。

魏の華北地域の軍勢は「北軍」、呉の江南地域の軍勢は「江東軍」と呼ばれることもあり、地域を指した表現も使われていました。また、蜀の四川勢力は「巴蜀軍」として地域の名で呼ばれることもありました。

このように、三国時代の中国では地域と結びついた呼称も存在しましたが、日本の戦国時代ほどの明確な分類はなかったと考えられます。

日本の戦国時代における「関東勢」「西国勢」といった分類は、地域ごとの連合軍的な性質や大名間の同盟関係が強く影響しています。一方で、三国時代の中国は統一を目指した三国が国ごとにまとまっていたため、地域に基づく分類よりも国名を用いる傾向が強かったと言えます。

三国時代の中国でも地域を指す呼称が使われることはありましたが、主に「魏」「呉」「蜀」といった国名を冠して呼ばれることが多く、日本のような地域ごとの総称は一般的ではありませんでした。それぞれの国が一丸となって戦った三国時代ならではの特徴といえるでしょう。